[題詞]高市岡本宮御宇天皇代 [息長足日廣額天皇] / 天皇登香具山望國之時御製歌
高市の崗本の宮に天の下しろしめしし天皇の代
天皇の香具山に登りましてくにみしたまへる時に
みよみませるおほみうた(御製歌)
大和には むらやま
(群山) あれど とりよろふ
あめ
(天)の香具山 登り立ち 国見をすれば 国原は
けぶり立ち立つ 海原は かまめ
(鴎)立ち立つ うまし国ぞ
あきつしま
(蜻蛉島) 大和の国は
メモ
万葉仮名覚書
山常 (やまと)
煙立龍
加萬目立多都
怜 (うまし)
蜻嶋(あきづしま) 八間跡能國
鑑賞
奈良の香具山の国見となっているが怪しい。奈良の香具山
から鴎は見えないでしょう。それに、鴎は冬に現れますから、
煙を霞と訳すのも無理がある。それで古田武彦さんはこの歌
の香具山は奈良ではなくて、別府の鶴見山ではないかと仮説
をたてている。そうすると、このけむりは冬の温泉から立ち上
る水蒸気と言う意味にとれる。
奈良時代は、空想や創造溢れる詩情ゆたかな時代だったの
でしょう。天の香具山が天から降ってきた山であると言う伝承
があったりするくらいだから。
おそらく伝承として語り継がれた歌が時間や空間を超えて、こ
の時代の歌として、納まったように思われる。
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