2012年6月22日金曜日

宇智の野に(遊猟)みかりしたまへる時の歌


  [題詞]天皇遊猟内野之時中皇命使間人連老獻歌

天皇の宇智の野に(遊猟)みかりしたまへる時、なかちひめみこ
(中皇命)のはしひとのむらじおゆ(間人連老)をして献らせたまふ歌



やすみしし 我が大君の 朝には 取り撫でたまひ

夕へには い寄り立たしし み執らしの 梓の弓の

中弭の 音すなり 朝猟に 今立たすらし 夕猟に

今立たすらし み執らしの 梓の弓の 中弭の 音すなり

やすみしし わがおほきみの あしたには とりなでたまひ
ゆふへには いよりたたしし みとらしの,あづさのゆみの,
なかはずの おとすなり あさがりに いまたたすらし
ゆふがりに いまたたすらし みとらしの あづさのゆみの
なかはずのおとすなり 

<メモ>
万葉仮名覚書 八隅知 伊縁立之 御執 良思

鳴弦の儀(めいげんのぎ)  弦を引き音を鳴らす事により、 魔気・邪気
病気を祓う。                                                     
梓巫女(あずさみこ) 梓弓を鳴らしながら神降ろしの呪文を唱える。                       

鑑賞  好きですね。この歌。みかり(遊猟)は、古神道の行事のようなも
のでしょう。 中皇命には諸説あります。天皇、皇后、姫君、何れにしろ女
性です。おそらく、巫女的な役割を果たしているのでしょう。折口信夫によ
れば、中というのは、中間の意味で、天子と神との間にいる、尊い方だと
いう。

祝詞集の鎮魂歌にこう言うのがあります。

猟夫さつを等らが もた(持)来きのま弓 おくやまに(御狩)みかりすらし
も 弓の(筈)はず見ゆ 


この祝詞も巫女が神がかりして宣るのでしょう。 さつをに対し、みかりと
敬称を使っていますからね。大伴家持の歌には猟としか使われていない。
この歌は薬狩りの歌と言われています。

かきつばた衣に摺り付け丈夫のきそひ猟する月は来にけり


弓の霊験は、八幡太郎義家の伝説にもあります。              
                                                                            

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